マージャンからのセレクト
今まで、正当な理由であっても契約をやめることができず、貸し手に不利なことが借家経営を阻害していた。
それをやめれば借家の枇絡が増えるはずだというのが導入理由である。
そもそも、バブル経済の崩壊、車種担の転換で、住宅土地市場が完全に買い手市場、借り手市場に転換している中で定期借家権にどのような存在意義があるのか。
社会政策としての借地法、借家法の制定は、借り手の社会的経済的力が弱く、売り手市場、貸し手市場の中で借り手の居住権を保護するために必要な規制であったはずである。
定期借家権の導入は、貸し手の利益を復活させるものとされているが、貸し手は、借り手市場の中ではリスクを免れるために更改後も借り手に引き続き借りてもらいたいのが現実であろう。
定期でなければならない理由は果たしてあるのだろうか。
借り手市場の中では、貸し手は安定的に借り手が居住し続けることに利益があるのであり、定期にして契約をやめることに特段のメリットは見当たらない。
契約更改時に契約関係を維持したいのは貸し手のほうである。
いま改めて新規の契約だけに定期借家権を創設して、これが貸し手の利益を復活させ、これで借家の枇給が増えるという意味がよく理解できない。
もともと借家法の問題点は、住宅枇給の促進より、既存の借家権について立ち退き料の不当な要求を抑制し、合理的な契約関係を回復することにあるはずであり、新規のものだけに定期借家権を導入しても問題の解決にはならない。
借地法、借家法が成立した大正一〇年、「正当理由」が追加された昭和一六年の墓尽の住宅不動産事情と現代のそれとを比較してみよう。
当時といまとでは、想像もできないほど土地住宅の市場横道が根本的に異なっている。
一九一五年時点の人口は二二五万人、世帯数は五八・五万世帯であったが、宅地の所有者はわずか二・二万人、土地所有者世帯の比率は七七%にすぎず、現在の東京都区部の三〇%の世帯が宅地理何者であることに比べても極めて少数であった。
これらのごく少数の商人地主、華族・寺院などの地主層が借家を経営し、市民の九〇%は住宅を所有せず、借家暮らしの状況にあった。
明治四五年の脊科を見ると、墓星巾の土地所有者数は二万四四三人、二万人の地主が三八一七ヘクタールの宅地を独占し、さらに一〇〇〇坪以上の土地を所有する者は一九七八人、その理伺面積は二七八七ヘクタール、二〇〇〇人たらずの大土地所有者が墓尽の大部分の宅地を所有していたことになる。
纏言、明治維新時に官有地の払い下げを受けた華族、寺社などの資産家と、明治以降零細地主から土地担保で宅地を集約していった大商人たちであり、この時期は墓尽の土地不動産は少数の資産家層に独占されていたのである。
大正デモクラシーのもとで社会政策立法として借地法、借家法が成立したが、これは、このような社会的背景のもとに実施された工場法、都市計画法、市街地建築物法など、当時のH内閣の社会政策の一環であった。
借地法、借家法は一九二年四月に公布された。
その適用範囲は大都市に限定され、東京市の範囲と、豊多摩、北豊島、南葛飾の三郡、大阪では大阪市と西成、東成の二郡、それに京都、神戸、横浜の各市とされた。
この制度により借地期間は石造り、煉瓦造りの建築物では六〇年間、木造建築では三〇年を期限として短期間の契約は認められないことになった。
また、期間満了時の更新では、石造り、煉瓦造りの建築物は三〇年、木造建築は二〇年になり、更新時に地主が借地人に宅地を貸さないときは借地人は地主に家屋の買い取りを請求できることになった。
借家法のポイントは、貸し手の変更により借家人が追い出されないように、建物の引き渡しを対抗要件にしたことにある。
当時の土地不動産の実情から見て社会政策立法として弱者たる借地人、借家人に保護を与える公共の介入は必要であり、制度はそのように機能してきたのである。
借家法は一九四一年に改正されて、昭和一六年戦時体制の中で、出征兵士や産聾議士の家族の居住権を保護すべく、貸し主は自己使用その他正当な理由がないと更新栢結・解約申し入れができないこととした。
戦後も住宅難の続く中で弱者としての借家人、借地人の居住権を保護する姿勢が続き、借地法、借家法は、事業用の借家、借地にも適用された。
借り手の権利が住宅難の解消にもかかわらず強化され、司法も杓子定規に運用、判例も借家人保護、借地人保護の傾向を強めてきた。
次第に、借地権、借家権は居住の権利を保護することよりも、地価上昇の利益の分配をするための権利と化してしまい、本来の目的を逸脱してしまったといえよう。
しかし、現実の貸家市場においては借家法が市場を歪める弊害は、少なくても四〇年代までは余りなかったと思われる。
大量の木賃アパートが枇給されたことを見ても、借家法が貸家の供給を阻害していたとは思われない。
今でも、大多数の借家一契柄は二年の定期であり、借家法が契約関係を阻害する現実はない。
借家法の存在白体も意識されていないのではないのか。
ただ、四〇年代になって地価の上昇に伴い、地価上昇利益の分配をめぐって当事者間に争いが生じることになる。
土地の有効利用をするために、土地所有者が再開発を計画しても、借家人、借地人は、借地法、借家法を盾に立ち退きを拒み、不当な額の立ち退き料という補償を要求するようになる。
とりわけ既成市街地、町中の商業用借地、借家にこの傾向が強かった。
借地法の存在が、都市再開発を阻害しているという認識から、その改正は、既得権の借地権の行き過ぎを是正することが最大の目的であった。
新規契約にだけ適用する定期借地権では問題解決につながらない。
なぜ、バブル経済の時期になって定期借地権が登場したのか、それは住宅供給を促進するための経済的規制緩和の一環とされたからである。
そもそも借地法とは契約の自由が原則であるはずの自由経済へ公共が不当に介入することを行っているのであり、このことが借地の枇総を阻害している。
契約更改時における正当事由がないと解約申し入れができないという規定の存在がそもそも問題であり、この規定が都市再開発、機能改善を阻害している。
借地法は、借地権を盾に居住を守るのではなく、地価上昇利益の分配を強要する手段になっているのである。
この現行の借地法、借家法のせいで土地の有効利用、都市再開発の円滑な施行ができないことが、公共の福祉に反しているという経済掌者たちの認識から、定塑白地権という新たな考え方が生まれたのである。
借地法、借家法は、自由主義経済に対する経済的規制と見て、規制緩和としてこれを廃止すべきという日米空露議のアメリカの対日要求になった。
アメリカの言い分は、日本のエコノミストの受け売りだったかもしれない。
当時の論議の中心は借地法の改廃であり、借家法はほとんど意識されておらず、付け足しであった。
本来なら、借地法をやめるかどうかという論争であったものが、既契約の借地人の既得権の保護、地主協ム耳、借家人襲冨の紛争を回避し、定型白地権の導入を図るために、新規の借地権のみを対象にして年月を切った定期借地権制度をつくるという妥協の産物となったのである。
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